- はじめに
- 第1章:20mシャトルランの基本概要
- 第2章:20mシャトルランを楽しく実施する意義
- 第3章:実施前とウォーミングアップの工夫
- 第4章:20mシャトルランに「ゲーム性」を取り入れる工夫
- 第5章:段階的な目標設定とチャレンジ要素の導入
- 第6章:記録を「見える化」して継続力を育てる
- 第7章:初心者・子ども向けの工夫と配慮
- 第8章:上級者・アスリート向けの発展的トレーニング
- 第9章:安全と健康管理の徹底
- 第10章:イベント化でさらに盛り上げる!
- 第11章:指導者が担う重要なサポート
- 第12章:運動後のケアと心のケア
- 第13章:継続することで得られるメリット
- 第14章:まとめ|20mシャトルランを「楽しさ」に変える発想
はじめに
20メートルシャトルランは、学校の体力測定や部活動・スポーツチームのトレーニングなどで幅広く採用されている持久力測定法です。定められたテンポの「ビー音」に合わせて、20メートルを往復し、その回数や段階で心肺持久力を測定します。シンプルなテストながら、「きつい」「つらい」「退屈」といったネガティブな印象を持つ人が多いのも事実です。しかし少し工夫をこらせば、「トレーニング兼ゲーム」のような楽しさを取り入れることが可能になります。
本記事では、20mシャトルランをより楽しく、魅力的に実施するための具体的なアイデアを余すところなくご紹介します。ウォーミングアップの工夫や音楽との連動、モチベーションを高めるイベント化の提案、指導者の声かけや安全対策など、現場でそのまま使えるノウハウを包括的にまとめました。学校やクラブ、部活動で繰り返し実施する際に、「飽きずに」「安全に」「前向きに」取り組む工夫を取り入れることで、体力向上とともにチームワークや協調性の向上にもつなげられます。
やや長文になっておりますが、興味のある章からご覧いただき、ぜひ現場で役立つアイデアを取り入れてみてください。
第1章:20mシャトルランの基本概要
1‑1. 20mシャトルランとは?
20メートルシャトルランは、心肺持久力評価の代表的なフィットネステストです。海外では「ビープテスト(Beep Test)」や「PACERテスト」と呼ばれ、テンポに合わせて20メートルを往復走する形式です。音の速度は段階的に上がり、テンポに追いつけなくなった時点で終了し、そのレベルと往復回数をスコアとして記録します。
このテストの利点は、広さ・機材の要望が少なく、実施が容易な点にあります。必要なのは「正確に測った20メートルのスペース」と「合図音を流す音源」のみで、体育館や校庭、公営の施設などで手軽に導入可能です。しかし、一方で参加者が「単調に感じる」「長く感じる」という印象を抱きやすい点は否めません。ここに楽しくするための工夫が求められます。
1‑2. 目的と効果
20mシャトルランで測るのは、心肺機能・持久力・集中力です。心肺持久力の向上は、長時間の運動でも疲れにくくなることを意味し、スポーツにおいては後半でもパフォーマンスを落とさず戦える体力を育みます。また、基礎体力の向上は健康増進・肥満予防・生活習慣病のリスク低下にもつながります。
さらに、20mシャトルランは短時間で高強度の運動量を稼げる点も大きなメリットです。これは、忙しい現代人にとって魅力的な要素といえます。子どもから大人まで広く活用することで、自分自身の体力ステータスを客観的に把握し、トレーニングの必要性を実感しやすくなるでしょう。
1‑3. 実施の流れ(一般的な方式)
基本的な実施手順は以下の通りです:
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滑りにくい平坦な場所に20メートルのラインを設置する
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音源(CDやデジタル形式など)を準備し、「ビー音」でテンポが段階的に上がるタイプを使う
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参加者をスタートラインに整列させる
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音源を再生し、ビープ音に合わせて20メートルを全力で往復走
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折り返したらすぐに戻り、次の音に合わせて再び走る
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音に追いつけず、2回続けて遅れた時点でテスト終了
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最終到達したレベルと往復回数を記録する
通常は、年齢・学年・性別ごとの平均値と比べる他、自分の前回の結果との比較により、成長を実感することが最も重要です。
第2章:20mシャトルランを楽しく実施する意義
2‑1. 「退屈さ」と「ストレス」からの脱却
20mシャトルランは、音を合図にただ往復するだけというシンプルな形式ゆえ、参加者のモチベーション維持が難しいという面があります。「結果が振るわないと劣等感を感じてしまう」「同じ動作を延々繰り返すのがつらい」という声も多く、場合によっては体力測定そのものや運動への嫌悪感に発展するリスクもあります。
しかし、本来運動には**「楽しさ」「達成感」が伴うべきです。チームスポーツや部活動の中でこそ、「仲間と一緒に励まし合う楽しさ」や「競い合う刺激」がモチベーションを引き出します。20mシャトルランを単なる測定ではなく、「ゲーム性」や「達成感を得る演出」がある活動に変えることで、**退屈やストレスを大きく軽減できます。
2‑2. 継続を支えるモチベーションの維持
持久力テストは、単発で終わらせるのではなく、定期的に実施することで、継続的な体力向上や健康維持につながります。そこで大切なのは、測定日=つらいだけの日と捉えさせず、むしろ「今日はどれだけ伸びるか楽しみ」「前回を超えるぞ」といったチャレンジ精神を刺激する日にすることです。
そのためのポイントは、結果の見せ方や声かけ、計測方法の少しのアレンジによって、初心者や運動が苦手な人でも「やってみたい」「もう一度やってみたい」と思えるような前向きな体験づくりができることです。
第3章:実施前とウォーミングアップの工夫

3‑1. 動的ストレッチ&ウォーミングアップで体を整える
20mシャトルランは、短距離ダッシュとターンの繰り返しで行われるため、いきなり全力を出すと筋肉・関節・心肺への負担が大きくなり、ケガのリスクが高まります。安全かつ効率よく準備するために、以下のようなウォーミングアップが有効です:
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ダイナミックストレッチ:軽いジョグやスキップ、前後/左右への動的ストレッチで徐々に体を温める
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瞬発力ドリル:ラダーやサイドステップ、ショートスプリントで脚の回転と反応を高める
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呼吸への意識づけ:走る前に深くリズムを整えた呼吸を意識し、集中を高める
このように丁寧に準備することで、身体も気持ちも「走る準備」が自然に整い、集中力ややる気が向上します。グループで行う場合は、軽くリーダー役を決めて声を掛け合いながらウォーミングアップすると、チームの一体感も高まります。
3‑2. シューズやウェア・安全面の確認
20mシャトルランのように急停止やターンを伴う動きでは、足元の状態がとても重要です。以下の安全チェックを事前に行い、安心して取り組める環境を整えましょう:
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運動靴の状態:靴底の摩耗具合、ホールド感、靴ひもの締まり具合を確認
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服装:汗をかいても動きやすく快適なウェアを選ぶ
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サポーターの使用:足首や膝に不安がある場合は、サポーターなどでサポートを検討
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会場の安全確認:水たまりや滑りやすい床、障害物がないかをチェックする/屋外なら地面の凹凸や濡れにも注意
こうした対策をきちんと行うことで、不安材料を減らし、気持ちよく、そして安全にシャトルランに集中できる環境が整います。
第4章:20mシャトルランに「ゲーム性」を取り入れる工夫
4‑1. チーム戦・グループ戦で「仲間と走る楽しさ」を演出
個人記録だけを追い求める形式では、参加者のモチベーションが下がったり、苦手意識を助長することもあります。
そこで有効なのが、グループやチーム単位での協力要素を加えることです。以下のような形式が効果的です。
✅ 少人数のチームで記録を合算して競う
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2〜3人のチームを作り、メンバー全員の到達ラウンドを合計して得点化
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仲間と応援し合いながら取り組むことで、孤独感やプレッシャーを軽減
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チーム対抗のランキング発表で、勝ち負けを楽しむ要素もアップ!
✅ リレー形式にアレンジ
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1往復ごとに次のメンバーへバトンタッチ
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ビープ音のテンポは継続するため、タイミングを合わせる工夫と緊張感がゲーム性を高める
チーム形式を取り入れることで、「自分のため」だけでなく「仲間のためにあと一歩頑張ろう」という前向きな意識が自然と生まれます。
4‑2. ビンゴやポイントで「楽しい目標」をつくる
単調になりがちな20mシャトルランに「ゲームのルール」をプラスすると、参加者のやる気がぐっと高まります。
たとえば、以下のようなビンゴ形式やポイント制が有効です。
🎯 ビンゴカードを使った達成ゲーム
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ビンゴカードに段階数や往復数を事前に設定
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達成できたマスにスタンプやシールを押す
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「あと1ラウンドでビンゴ完成!」という達成欲が刺激される
💯 ポイント加算方式で記録が「報酬」に
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レベル5なら5点、レベル10で10点…と段階ごとに得点
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特定のラウンドでボーナスポイントを設定すれば更に盛り上がる
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合計点で表彰やプチ景品を用意してモチベーションアップ!
このように「スコアだけでなく楽しみながら挑戦する仕掛け」をつくると、自然と集中力と持久力の両方が引き出されます。
4‑3. 音楽・リズム・演出で「イベント感」をプラス
ビープ音だけの単調なシャトルランに、“音”の演出を加えると楽しさと一体感が一気に高まります。
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最初の段階は穏やかで心地よいBGM
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中盤以降はテンポが徐々に上がる曲調にすることで、緊張感と盛り上がりを演出
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※ただし、ビープ音が聞こえづらくならないよう配慮
また、指導者やリーダーがテンポを口に出してカウントしたり、応援をリズムに乗せて声かけしたりするのも効果的です。体育館での実施なら、エコー効果で臨場感倍増!
第5章:段階的な目標設定とチャレンジ要素の導入
5‑1. 「個人目標」+「チーム目標」で二重の達成感を
「限界まで走れ」ではなく、事前に到達目標を決めて挑戦するスタイルにすることで、達成感と継続意欲が高まります。
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「前回より+1往復」「レベル8を目指す」といった個人目標
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「クラス全体で往復2,000回達成」などチーム全体の合計目標
このように2段階の目標設定を行えば、参加者一人ひとりが「自分も貢献したい」と思えるようになります。
5‑2. 小さな報酬やシールで「あと1段階」のやる気を引き出す
「もう無理かも…」と思ったときの一押しになるのが、小さなご褒美や表彰の仕掛けです。
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レベル5でシール、レベル10で拍手やメッセージカード
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連続記録更新で「○○賞」などの称号をプレゼント
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小学生には「見える報酬」/中高生や大人には「SNS紹介」や「称号バッジ」が効果的
努力が可視化されると、「次も頑張ろう」という継続意欲につながります。
第6章:記録を「見える化」して継続力を育てる
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6‑1. 記録の可視化で「成長」を実感
継続的にシャトルランを行うなら、記録を見える形に残すことが鍵です。
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グラフや表で記録の推移を可視化(アプリ・エクセルなど)
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体育館やクラブハウスに**「記録ボード」を設置し、全員の進捗を見える化**
これにより、「成長した」「停滞している」などの現状分析ができ、改善意識や競争心が高まります。
6‑2. 練習メニューに記録を活かす
シャトルランの結果は、日々のトレーニングメニューの再設計にも活用可能です。
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インターバルトレーニングで心肺強化
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長距離走やペース走で持久力の底上げ
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筋力・体幹トレーニングでフォームとパワー安定
記録を元にしたフィードバックで、「測る→改善→再測定」のサイクルが機能します。
第7章:初心者・子ども向けの工夫と配慮
7‑1. 小さな達成感を積み重ねる「導入方法」
運動に不慣れな子どもや初心者に、最初からフルスペックのテストを求めるのはNG。
段階を下げた「ミニシャトルラン」から始めるのが効果的です。
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距離を10mに短縮/テンポを緩やかに設定
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「がんばったらご褒美」「みんなで一緒に挑戦」などの演出で楽しく導入
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少しずつ達成感を積み重ねることで、運動嫌いを防止
7‑2. 優しい声かけと観察で安心感を
疲れが見えたらすぐにケア。 無理はさせず、安心してチャレンジできる環境づくりが大切です。
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「呼吸整えてみよう」「あと1回ならいけそうだよ」といった具体的な声かけ
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頑張る姿をしっかり見て、認めてあげることが最大のモチベーションにつながります
こうした日々の関わりが、「シャトルラン=つらい」ではなく、「少し大変だけど、楽しい体験」へと変えていきます。
第8章:上級者・アスリート向けの発展的トレーニング
8‑1. 距離や方向を変える“変則シャトルラン”
すでに通常の20mシャトルランに慣れている上級者や競技アスリートには、バリエーションを加えることで新たな刺激とトレーニング効果を与えることができます。
🔁 ジグザグ走で敏捷性を強化
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通常の直線走ではなく、コーンを配置してジグザグに走行
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方向転換のスキルや足の使い方を鍛える実戦的な内容
🔄 距離を変えて集中力アップ
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15mや25mなど、あえて標準距離から少しずらす
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走行リズムが狂いやすいため、集中力と適応力が求められる
このようなアレンジは、スポーツの実戦に即した動作能力の強化に直結します。
8‑2. ビープ音のカスタマイズで“負荷調整”
一般的な音源ではなく、テンポを自由に調整できるアプリやオリジナル音源を活用すると、目的に応じた練習が可能になります。
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短時間で高強度に追い込む:テンポを速め、短いインターバルで繰り返す
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持久力重視の長時間走:ゆっくりめのテンポでスタミナ強化
テンポ操作によって、トレーニングの目的に応じた柔軟な負荷設定が可能です。
第9章:安全と健康管理の徹底

9‑1. ケガ予防と正しい応急処置
シャトルランでは、急加速・減速・方向転換の繰り返しにより、特に膝・足首・腰への負荷が集中します。以下のポイントを守りましょう。
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ウォーミングアップ:ダイナミックストレッチや軽いジョグで筋温を上げる
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クールダウン:静的ストレッチで筋肉の緊張をほぐす
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異変があれば即中止:違和感や痛みを感じたら無理せず中断し、**RICE処置(冷却・圧迫・安静)**を行う
9‑2. 体調・気象条件への配慮
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屋内でも熱中症リスクあり:水分補給を徹底し、湿度・気温を常にチェック
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体調がすぐれない時は参加を見送る勇気も大切
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長期的な習慣化には、安全第一の意識と無理のない運用が不可欠です
第10章:イベント化でさらに盛り上げる!
10‑1. クラス対抗戦や大会で「お祭り化」
シャトルランをスポーツイベントとして演出することで、普段のテストとは違った盛り上がりが期待できます。
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DJ風のアナウンスや実況:名前を読み上げたり、テンションの高い実況で会場を一体感ある空気に
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多角的な表彰制度:成績上位者だけでなく、「皆勤賞」「チャレンジ賞」なども設けて全員が主役になれる工夫を
10‑2. SNSや動画での記録・共有
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許可を得たうえで、写真や動画を撮影してSNSにアップ
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自分のフォームや結果を見直せる材料にもなり、モチベーションアップ
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学校やクラブの公式アカウントで紹介すれば、保護者や地域の応援の声も集まりやすくなります
第11章:指導者が担う重要なサポート
11‑1. 具体的なアドバイスと前向きな声かけ
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「腕を大きく振ろう」「呼吸を整えてみよう」など、走りながらできるアドバイスを
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終了後は「フォームが安定してたね」「〇〇秒長く走れたよ」と努力の結果を具体的に認める
前向きな声かけが、次回へのやる気と自信につながります。
11‑2. 一人ひとりの個性に寄り添う
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体力差・性格差を理解し、誰もが“挑戦できた”と感じられる環境づくりを意識
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途中でリタイアした子にも「最後まで頑張ったね」と達成感を与える声かけが大切です
第12章:運動後のケアと心のケア
12‑1. クールダウンで翌日の体調を整える
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軽く歩いて心拍を整える(2〜3分)
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太もも・ふくらはぎ・股関節などの静的ストレッチ
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落ち着いたBGMで深呼吸:心身のリラックス効果あり
12‑2. ネガティブな感情への配慮
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「記録が伸びなかった…」という子には
→「練習の成果は次につながる」「前回より落ちてないよ」など前向きな言葉がけ -
失敗や脱落に対しても、「みんなで応援していたよ」と仲間の存在を実感させる言葉が効果的
運動の価値は結果だけでなく、挑戦し続けたプロセスにあります。
第13章:継続することで得られるメリット
13‑1. 心肺機能と体力の底上げ
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定期的なシャトルランは持久力の向上に直結
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スポーツ全般でスタミナ切れを防ぎ、体力テストの結果向上にも貢献
13‑2. チームの一体感が高まる
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お互いを励まし合いながら走ることで、自然と仲間意識・協調性が育まれる
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「一緒に頑張った」という経験が、かけがえのない記憶に残る
13‑3. 自己管理力の育成
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自分の記録を把握・分析し、トレーニングや生活習慣の改善に活かす力がつく
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このスキルは勉強や将来の仕事にも通じる**“生きる力”の基礎**になります
第14章:まとめ|20mシャトルランを「楽しさ」に変える発想
20mシャトルランは、「苦しいテスト」から「成長の機会」に変えることができます。以下に本稿の要点を整理します。
🔸 安全対策と準備の徹底
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十分なウォーミングアップとクールダウン
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会場の安全確認と靴・服装チェック
🔸 ゲーム性・イベント性を加えて楽しく
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チーム戦、ビンゴ、ポイント制などでモチベーションアップ
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BGMや演出でイベント感を演出
🔸 成長を“見える化”して達成感を育てる
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記録のグラフ化、掲示板での共有
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個人目標+チーム目標の設定でやりがいの最大化
🔸 初心者・子ども・上級者それぞれに最適化
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ミニ版やテンポ調整で導入しやすく
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上級者には方向転換・高負荷設定でチャレンジ要素を強化
🔸 メンタルケアとポジティブな声かけ
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挑戦する姿勢を認める指導
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結果に一喜一憂させず、過程の努力を大切に
20mシャトルランはただの体力測定ではありません。
“楽しさ”“挑戦心”“成長の実感”を組み込めば、どんな参加者にも価値ある体験になります。
あなたの現場でも、ぜひこの記事を参考にして、笑顔と達成感のあるシャトルランの実施を目指してみてください!

