はじめに
中学校理科の中でも「身の回りの物質」は、教科書だけでなく日々の生活の中でもたくさん触れ合うテーマです。例えば、水道の水、飲んでいるジュース、家の鍵やドアノブ、プラスチック容器、ガラスのコップ、着ているTシャツや制服まで、目に見えるものも、見えにくいものも、すべて「物質」です。理科を学ぶことで「なぜ水は凍るのか」「なぜ金属はサビるのか」「なぜプラスチックは便利だけど環境問題になるのか」といった“身近な疑問”が科学の目で分かるようになります。
この記事では、中学生が理科の力をつけられるよう、「身の回りの物質」に関する基礎知識から、発展的な考察、環境とのつながりまでを、たくさんの問題と解説で丁寧に掘り下げていきます。「覚える」だけでなく、「考える」「発見する」ことを重視した内容です。各単元の終わりには、自分の生活に結びつけて考えられる応用問題も付けているので、勉強だけでなく実生活にも役立つ理科力が身につきます。ぜひ最後まで挑戦してみてください。
目次
- 物質って何だろう?
- 水の性質と身近な活用例
- 空気の成分と性質を知ろう
- 金属の特徴と使われ方
- プラスチックの種類とリサイクル
- ガラス・陶器・ゴムの性質
- 食塩・砂糖・身近な結晶の観察
- 溶解・濾過・蒸発のしくみ
- 酸性・アルカリ性とpH
- 衣服・生活用品の素材を調べよう
- 身の回りの物質を使った実験問題
- 応用問題:環境と物質のつながり
- まとめ
1. 物質って何だろう?
「物質」とは?科学的な意味と日常の違い
私たちの生活は「物質」に囲まれています。理科でいう物質とは、「質量」と「体積」をもち、空間を占めるすべてのものを指します。水も空気も金属も、身の回りのありとあらゆるものが物質です。中学生になると、「エネルギー(光や熱)」は物質に含まれないことや、物質には「純物質」と「混合物」があることも学びます。
- 純物質…一種類の成分だけからできているもの(水、酸素、鉄など)
- 混合物…二種類以上の成分が混じり合ってできているもの(空気、ジュース、海水など)
例えば水はH₂Oだけからできた純物質ですが、川の水やジュースは色々なものが混じっている混合物です。
物質の三態(固体・液体・気体)
物質は温度や圧力によって「固体・液体・気体」と姿を変えます。氷(水の固体)→水(水の液体)→水蒸気(水の気体)はその典型例です。
- 固体:形や体積が決まっている(例:氷、鉄、消しゴム)
- 液体:体積は決まっているが、形は容器に合わせて変わる(例:水、牛乳、ジュース)
- 気体:体積も形も容器次第で自由に変化(例:空気、酸素、二酸化炭素)
物質の性質・分類の例
- 磁石にくっつく/くっつかない(金属と非金属)
- 水に溶ける/溶けない(食塩・砂糖と油・砂)
- 色、重さ、硬さ、溶けやすさ、電気の通しやすさ、など
考えてみよう(問題)
- なぜ水は「物質」で、光や熱は「物質」ではないのでしょう?
- 家や学校で見つけた純物質と混合物を5つずつリストアップしてみよう。
- 物質の三態のうち、日常で一番よく目にするものはどれか、その理由も考えてみよう。
- 物質の状態が変わるとき、重さ(質量)は変わるか?なぜ?
2. 水の性質と身近な活用例
水の基本的な性質と特徴
水は地球上でもっとも豊富な物質のひとつで、人間をはじめとする多くの生物にとって不可欠な存在です。水は「無色透明・無味無臭」で、たくさんの物質を溶かす“溶媒”の性質を持っています。地球上の水は海、川、湖、大気中などさまざまな場所に存在し、形や性質を変えながら循環しています。
- 水は0℃で凍り、100℃で沸騰する
- 液体として存在する温度の範囲が広く、地球の生命に重要
- 水は他の多くの物質(食塩・砂糖・空気など)を溶かす力がある
- 表面張力(小さな水滴が丸くなる)や毛細管現象(タオルや植物の水の吸い上げ)も特徴
状態変化と水の循環
水は温度変化により「氷(固体)⇔水(液体)⇔水蒸気(気体)」と姿を変えます。これは「融解」「凝固」「蒸発」「凝縮」などと呼ばれ、気象や生活とも深く結びついています。
身近な活用例と社会とのつながり
- 飲料水、料理、掃除、洗濯、入浴など生活のあらゆる場面
- 工場や発電所で冷却や加熱のために利用
- 農業(灌漑)、医療(消毒や薬の溶解)
- 川や池の生き物の住処として
考えてみよう(問題)
- 水の「表面張力」や「毛細管現象」はどんな場面で見られるか調べよう。
- 水が溶かせないものにはどんな例があるか考えてみよう。
- 雨、雪、霧、露など、自然現象の中で水がどのように姿を変えているか調べよう。
- 世界には水が足りない地域もある。その原因や対策について考えてみよう。
3. 空気の成分と性質を知ろう
空気は何からできている?
私たちは普段、空気の存在を意識することはあまりありませんが、空気は生きていくうえで欠かせない「物質の混合物」です。無色透明でにおいも味もないですが、空気にはいろいろな気体が含まれています。
- 窒素(約78%)…私たちが吸っても体にあまり影響を与えない「安定した」気体
- 酸素(約21%)…呼吸に欠かせない。火が燃えるのも酸素のおかげ
- 二酸化炭素(約0.04%)…私たちの吐く息やものが燃えたときに出る
- その他…アルゴン、水蒸気、微量のガスなど
空気の性質
- 圧縮できる(ポンプで空気を押し込めると体積が小さくなる)
- 重さがある(空気にも質量があることをペットボトルなどで実験できる)
- 物を燃やす(酸素の働き)
- 音や熱を伝える
空気と生活のつながり
- 呼吸やスポーツ、音楽(楽器や声)、発電(風力発電や空気圧利用)
- 飛行機や自動車、船の動きにも空気の性質が使われている
- 気象(風や天気、雲、雨など)
考えてみよう(問題)
- 空気の主な成分をパーセントで答えよう。
- 空気がないと生きていけない理由を説明しよう。
- 空気の重さを調べる実験方法を考えよう。
- 二酸化炭素が多くなるとどんな影響があるか、地球温暖化との関係も調べてみよう。
4. 金属の特徴と使われ方
金属のもつ共通した性質
金属は理科の実験器具や、毎日の生活用品、社会インフラなど、幅広く使われています。多くの金属には次のような共通点があります。
- 光沢があり、ピカピカと光る(例:新しい10円玉やアルミホイル)
- 電気や熱をよく通す(家の電線やフライパン)
- たたくと広がる・引っぱると伸びる(展性・延性)
- 比較的重いものが多い
- 磁石にくっつく金属(鉄、ニッケルなど)とくっつかない金属(アルミ、銅など)がある
金属の種類と使われ方
- 鉄(Fe)…橋、建物、車、鉄道レール
- アルミニウム(Al)…缶、飛行機、サッシ、アルミホイル
- 銅(Cu)…電線、銅像、10円玉
- 金・銀…アクセサリー、メダル、電子部品
- 合金(複数の金属を混ぜてできたもの)…ステンレス(鉄+クロム+ニッケル)、黄銅(銅+亜鉛)など
サビと防止策
- 鉄は水や空気にふれると「酸化」してサビやすい
- サビ防止には、塗装、油を塗る、合金にする(ステンレス)などの工夫
金属リサイクルと環境
- 金属は何度でも溶かして再利用できる(資源の節約)
- ごみ分別やリサイクルが社会課題になっている
考えてみよう(問題)
- 金属がもつ性質を4つ以上挙げ、身近な例を調べよう。
- 磁石にくっつく金属とくっつかない金属を調べ、理由も考えよう。
- サビが発生しやすい場面と、サビを防ぐ工夫を自分で考えてみよう。
- 金属製品のリサイクルがなぜ必要なのか、地球環境とのつながりも考えてみよう。
5. プラスチックの種類とリサイクル
プラスチックの正体と特徴
プラスチックは、石油から作られる人工的な高分子化合物です。軽くて丈夫、加工しやすく、さまざまな色や形にできるため、現代社会に欠かせません。種類によって性質や用途が異なり、主なものには次のようなものがあります。
- ポリエチレン(PE):レジ袋やラップ
- ポリプロピレン(PP):食品容器、ペットボトルのキャップ
- ポリスチレン(PS):発泡スチロール、トレー
- ポリエチレンテレフタレート(PET):ペットボトル
- ポリ塩化ビニル(PVC):水道管、ホース
プラスチックの長所と短所
- 長所:軽い、割れにくい、水を通さない、腐りにくい、自由に色や形を変えられる
- 短所:自然に分解されにくい、燃やすと有害ガスが出るものがある、環境汚染の原因になる
リサイクルと環境問題
プラスチックごみは、川や海に流れ込むと生き物の命を脅かす大きな問題です。最近では「マイクロプラスチック」による生態系への悪影響も注目されています。
- リサイクルマーク、分別回収
- サーマルリサイクル、マテリアルリサイクルなど再利用の工夫
- プラスチックごみの削減に向けた世界的な取り組み
考えてみよう(問題)
- 家の中でプラスチックが使われているものを10個以上リストアップし、その素材名も調べてみよう。
- プラスチックごみが増えるとどんな問題が起きるか、自分の言葉でまとめよう。
- リサイクルされたプラスチック製品の例を探してみよう。
- プラスチックを使わずに済む生活の工夫を考えよう。
6. ガラス・陶器・ゴムの性質
ガラスと陶器の違いと性質
- ガラス:透明で硬い。光を通しやすい。熱や薬品に強いが、衝撃に弱く割れやすい。
- 陶器:主に粘土を高温で焼いて作る。色や模様が自由で、割れやすいが熱に強い。食器や花瓶、タイルなどで使われる。
ゴムの特徴
ゴムには「天然ゴム」と「合成ゴム」があります。天然ゴムはゴムの木の樹液から、合成ゴムは石油などから作ります。
- ゴムは弾力があり、引っ張ると伸びる「弾性」
- 水を通さない(防水性)
- 電気を通さない(絶縁体として使われる)
生活の中の活用例
- ガラス…窓、ビン、コップ、鏡、光ファイバー
- 陶器…お皿、茶碗、花瓶、タイル、トイレ
- ゴム…輪ゴム、消しゴム、タイヤ、長靴、手袋
工夫と課題
- ガラスは「強化ガラス」「合わせガラス」で割れにくく改良されている
- 陶器の割れやすさを補うために「陶磁器」や「磁器」といった種類もある
- ゴムはリサイクルや再利用も進んでいる
考えてみよう(問題)
- ガラスと陶器の違いを5つ挙げて表にまとめよう。
- ゴム製品とプラスチック製品の違いを調べよう。
- ゴムの弾性や絶縁性が生かされている製品を3つずつ例示しよう。
- 陶器やガラス、ゴムのリサイクルの現状と課題をまとめよう。
7. 食塩・砂糖・身近な結晶の観察
結晶のしくみと種類
結晶とは、分子やイオン、原子が規則正しく並んでいる固体のことです。結晶は、見た目が美しくキラキラしているだけでなく、身の回りの多くの物質の性質を決める大切な形です。身近な結晶の例には、食塩(塩化ナトリウム)、砂糖(ショ糖)、氷、雪、ミョウバンなどがあります。これらはすべて、一定のパターンに従って粒子が並ぶことで固まっています。
たとえば、食塩は小さな立方体の結晶を作ります。砂糖の結晶は角ばった四角柱のような形をしています。また、雪の結晶は六角形のパターンを持っていて、自然が作る芸術作品とも言えるでしょう。氷も結晶の一種で、冷凍庫の中の氷をルーペで観察すると、小さな六角柱がたくさん集まってできているのがわかります。
結晶の成長と条件
結晶は水溶液から作ることができます。たとえば、食塩水やミョウバン水などを濃く作って、時間をかけてゆっくり蒸発させると、溶けていた物質が結晶として析出します。このとき、温度や濃度、蒸発のスピードが結晶の大きさや形に影響します。
学校の理科の実験では、ミョウバンや硫酸銅の結晶作りがよく行われます。温かい水にできるだけたくさん溶かし、糸を入れて静かに冷やすと、糸のまわりにキラキラの結晶が大きくなっていきます。
結晶の性質と利用
結晶は固体としての強さや割れ方、溶けやすさに影響します。たとえば、食塩は水に溶けやすく、砂糖も同じく水に溶けますが、氷は一定温度以下でしか固体になりません。また、ダイヤモンドやルビー、ガーネットなどの宝石も、結晶の構造が独特な光沢や硬さを生み出します。
半導体材料であるシリコン結晶は、スマートフォンやコンピューターの基盤となっています。結晶構造を制御することで、さまざまな工業製品が作られています。
結晶を身近で探してみよう
- キッチンの塩や砂糖をルーペで観察
- 雪の日に拡大鏡で結晶を観察
- お菓子作りでキャンディーの結晶ができる様子を見る
- 理科の実験でミョウバンの結晶を育てる
考えてみよう(問題)
- 食塩・砂糖・氷・雪、それぞれの結晶の形や特徴を調べてまとめよう。
- ミョウバンや硫酸銅の結晶を大きく作るコツを考えよう。
- 結晶が身近な製品や産業でどのように利用されているか例を挙げよう。
- 砂糖や塩の結晶の形を顕微鏡やスマホのカメラで観察し、図にしてみよう。
8. 溶解・濾過・蒸発のしくみ
溶解のしくみとポイント
「溶解」とは、ある物質(溶質)が水や他の液体(溶媒)に均一に混じって見えなくなる現象です。たとえば、食塩や砂糖は水によく溶けますが、砂や油は溶けません。溶けるかどうかは物質の性質によって決まります。
- 溶けやすさを「溶解度」といい、温度が高いほど多く溶けるものが多い(例:砂糖、食塩)
- 気体は逆に、温度が低い方がよく溶ける(例:炭酸飲料は冷やすと泡が出にくい)
【生活での例】
- ジュースに砂糖やシロップがよく溶ける
- スポーツドリンクや点滴液も溶解の応用
濾過(ろか)の工夫と身近な活用
「濾過」は、液体とそれに混ざった固体を分ける方法です。たとえば、泥水をろ紙で濾すと、きれいな水だけが下に抜けて泥が紙に残ります。
【日常の例】
- コーヒーメーカーやお茶パック
- 浄水器やマスク
- 理科の実験で使うろ紙やフィルター
濾過がうまくいくポイントは、固体の粒の大きさが液体より大きいこと。泥水の泥はろ紙でこせるけれど、食塩水の食塩は粒が小さすぎて通り抜けてしまうので濾過できません。
蒸発と生活での利用
「蒸発」は、液体が表面から気体になる現象です。水たまりが消える、洗濯物が乾く、汗が蒸発して体温が下がる、などが例です。蒸発は温度が高いほど速くなり、風や湿度も影響します。
【科学と生活の工夫】
- 食塩水を蒸発させて塩だけを取り出す(塩田や実験)
- 醤油やみりんなどを煮詰めて味を濃くする
- 砂糖水を蒸発させて飴や結晶を作る
溶解・濾過・蒸発を組み合わせた分離
食塩水の例で考えると――
- 食塩は水に溶けるが砂は溶けない→「濾過」で砂だけを取り除く
- 食塩水を加熱して水分を蒸発させる→塩だけが残る
こうした一連の操作は理科の「混合物の分離」の大切な基礎です。
考えてみよう(問題)
- 濾過で分けられる混合物と分けられない混合物の違いは?
- 身の回りで「溶解」「濾過」「蒸発」を使った例を10個挙げてみよう。
- 飲み水をきれいにするための工夫(家庭や災害時)を調べてみよう。
- 食塩水から塩だけを取り出す方法を図や手順で説明しよう。
9. 酸性・アルカリ性とpH
酸性・アルカリ性の意味
水溶液の性質を表すとき、「酸性」「中性」「アルカリ性(塩基性)」という言葉を使います。これはpH(ピーエイチ)という数値で表され、pH7が中性、7より小さいと酸性、大きいとアルカリ性です。
【酸性の例】
- レモン汁、食酢、炭酸飲料、ヨーグルト
【アルカリ性の例】 - 石けん水、重曹水、漂白剤
【中性の例】 - 水道水、食塩水
pHの測定と色の変化
理科室には「リトマス紙」や「pH試験紙」があります。酸性ならリトマス紙が赤くなり、アルカリ性なら青くなります。pH試験紙はもっと細かい色の変化でpH値を調べることができます。
- pH1~2は強い酸(トイレ用洗剤など)
- pH12~14は強いアルカリ(排水溝用洗剤など)
強い酸やアルカリは危険なので取り扱い注意です。
酸・アルカリの性質と社会での役立ち
- 酸は金属を溶かしたり、カルシウムを溶かして石けんカスを除去したりする
- アルカリは油汚れの分解や消臭作用に使われる
掃除や料理、食品加工、医療、工業でも幅広く利用されています。
考えてみよう(問題)
- 家庭や学校で見つかる酸性・アルカリ性・中性の液体を5つずつリストアップしよう。
- 酸性雨の影響や、その対策について調べてまとめよう。
- 酸・アルカリを使った身近な掃除や調理の工夫例を挙げてみよう。
- 強い酸やアルカリを扱うときの安全対策を考えよう。
10. 衣服・生活用品の素材を調べよう
衣服の素材のバリエーション
衣服に使われる素材は「天然繊維」と「化学繊維」に大きく分けられます。
- 天然繊維…綿(コットン)、羊毛(ウール)、絹(シルク)、麻(リネン)など
- 化学繊維…ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨンなど
【特徴】
- 綿は吸水性がよく、肌触りもやさしい
- ポリエステルやナイロンは乾きやすく丈夫、しわになりにくい
- ウールは保温性が高い
近年はリサイクル素材や環境負荷の小さい新素材も増えています。
生活用品の素材の工夫
- プラスチック(軽い、安い、さびない)→バケツ、保存容器、文房具
- 金属(丈夫で熱に強い)→包丁、鍋、ドアノブ
- ガラス(透明、化学的に安定)→コップ、窓、電球
- ゴム(柔らかく弾力がある)→輪ゴム、長靴、手袋
素材の特徴を生かして、使い分けがされているのが分かります。
素材選びの工夫と社会課題
- 快適さや耐久性、安全性、環境への影響
- 化学繊維のリサイクルや、天然繊維のオーガニック化
- 持続可能な社会を目指して新素材開発も進行中
考えてみよう(問題)
- 家の中にある衣服や生活用品を素材ごとに分類してみよう。
- 天然繊維と化学繊維、それぞれの長所と短所をまとめよう。
- 最近注目されている環境にやさしい素材の例を探して調べよう。
- 素材選びが生活や社会に与える影響について意見を書いてみよう。
11. 身の回りの物質を使った実験問題
身近な実験アイデア
- 「水と油」の混ざり方:サラダ油と水をペットボトルに入れて振り、時間が経つと分離することを観察
- 「食塩水の蒸発」:皿に食塩水を入れて放置し、塩の結晶が残るかを観察
- 「リトマス紙で酸性・アルカリ性判定」:身近な液体を調べて色の変化を記録
実験で大切なこと
- 安全に注意すること(薬品の取り扱い、火気の管理など)
- 結果だけでなく、途中の変化や現象をよく観察し、記録する
- なぜそうなったのか自分なりに考察する
実験が生活や学習に与える意味
- 理科の知識が「目で見て」「手で触れて」実感できる
- 自分の疑問やアイデアから新しい発見が生まれる
- 生活の中の「なぜ?」を解決する力がつく
実験問題例
- 台所や風呂場でできる「水の蒸発」「濾過」の実験を計画してみよう。
- 自分で「結晶づくり」の実験をしたら、その手順や観察記録をまとめよう。
- 酸性・アルカリ性の判定実験を実際にやるときの注意点を考えてみよう。
- 日常の不思議を「実験」に変えてみよう。どんな疑問を確かめてみたい?
12. 応用問題:環境と物質のつながり
物質と環境問題の関係
私たちの身の回りの物質は、便利な生活を支える一方で、地球環境にも影響を与えています。たとえばプラスチックごみが増え続けている問題は世界中で深刻化しています。海や川に流れ出たプラスチックごみはマイクロプラスチックとなって、魚や鳥など生き物の体内に入り、最終的には人間の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
金属やガラスも、資源を掘り出し、加工して、使い終わったあとに「ごみ」として捨てられると、埋立地が不足したり、再利用されず資源が無駄になったりします。これを防ぐには「リサイクル」や「リユース(再利用)」の仕組みが重要です。
また、工場や自動車の排気ガスには有害な化学物質が含まれており、これが「酸性雨」や「大気汚染」「地球温暖化」などの環境問題の一因にもなっています。洗剤や薬品の使い過ぎ、土壌や水の汚染も、私たちが身の回りの物質をどう扱うかにかかっています。
環境に配慮した物質の使い方・選び方
- プラスチックの削減:マイバッグやマイボトルの利用、使い捨て容器を減らす
- リサイクルの推進:プラスチックや金属、紙、ガラスを分別して回収、リサイクル工場で再利用
- 再生可能な素材の活用:バイオプラスチックやオーガニックコットン、再生紙など
- 省資源・省エネルギーの工夫:詰め替えパックの利用、リユース品の活用、使い切り型から長く使える物への転換
未来の社会と物質
今後は、自然環境を壊さない「サステナブル(持続可能)な社会」を目指し、さまざまな素材や使い方の工夫が進んでいきます。生分解性プラスチックや、リサイクルがもっと簡単な素材の開発もその一つ。さらに、不要になったものを「資源」としてもう一度生かす「循環型社会」をつくることが、地球の未来を守るカギになります。
考えてみよう(応用問題)
- 家庭や学校で「リサイクル」や「リユース」に取り組んでいることを調べてみよう。
- プラスチックごみが海洋生物や人間にどんな影響を与えているか、調べてまとめよう。
- リサイクルマークやエコマークがついた商品を探して、その意味を調べてみよう。
- あなたの生活で実践できる「環境にやさしい工夫」を3つ提案しよう。
- 「未来の理想の素材」を考えてみよう。どんな特徴があればよい?
13. まとめ
身の回りの物質を深く学ぶことで、理科が単なる暗記科目ではなく、「なぜ?」「どうして?」を発見できる楽しい学問だと感じた人も多いのではないでしょうか。水や空気、金属、プラスチック、ガラス、衣服や食べ物にいたるまで、毎日使うもの・触れるものすべてが「物質」です。それぞれの性質を知ることで、生活の中の工夫や問題解決につながり、さらには地球規模の課題にも意識が向くようになります。
これからの社会は、「便利さ」と「環境へのやさしさ」を両立させる知恵がますます必要です。本記事で紹介した基礎知識や応用問題をきっかけに、ぜひ身の回りの物質について「自分で調べる・実験する・考える」習慣を身につけてください。そうすることで理科だけでなく、社会を生き抜く力も自然と育っていきます。
最後に――今日からできる「理科的観察力アップのヒント」をいくつか紹介します。
- 身の回りの物質を1日1つ「じっくり観察」して、特徴や使われ方をメモしよう
- 不思議だな、と思ったことを写真やノートに残して調べてみよう
- ゴミの分別やリサイクル、資源の使い方を家族や友だちと話し合ってみよう
- 実験や観察の結果を友だちと共有して、新しい発見を楽しもう
理科の面白さと、身の回りの物質の不思議をぜひこれからも探求していってください!